こんにちは。
設計部の星野です。
今日は木造建物の強度のお話です。
ちょっと難しい話かもしれませんが、木造の家に住むなら知っておきたいことかなと思いまとめてみました。
良ければ読んでみて下さいね。
では、どうぞ!
次男より、クイズ!
『ど~~っちだ?!』
何が?
これまた難問です
テキトウに指さして『こっち?』って答えてみたら、
『しぇいか~い』と満足そうにしておりました
正解しちゃったよ(笑)
もう1週間経ってしまいましたが、先週で阪神淡路大震災から25年でした。
今回はそれに因んだ建物の構造、強度のお話です。
阪神淡路大震災がきっかけで、今でも誤解されていること。
それは『瓦屋根の家は地震に弱い』ってことです。
そうではないってことがだいぶ知られてきましたが、今でも『瓦屋根は地震が心配じゃないですか?』ってたまに聞かれます。
確かに25年前、瓦屋根の家が多く倒壊したのですが、
これは耐震基準が見直される前に建てられた住宅が多く、
特にその時代に建てられた家には瓦屋根の家が多かったからです。
少しずつ耐震基準も見直されていっているので、細かく説明すると長くなってしまうので、
簡単にどう違うのかをまとめると、
現在は屋根の重さによって、建物に求められる強度が異なる。
(70年前はどんな屋根でも同じ強度で良かったんです)
木造建築に求められる強度は40年前の約1、5倍、65年前の約2倍
耐力壁の強度がより正確に判断されている。
耐力壁をバランスよく配置することも求められるようになった。
ざっくりとしたまとめですが、こんな感じでしょうか。
まず、屋根の重さによって、建物に求められる強度が異なります。
なので、屋根が重いから弱くなるということは無いのです。
屋根が重ければ、それだけ構造を強くしないといけないことになっているんですよ
だから倒壊の原因が瓦屋根ということではないのです。
屋根の重さ、種類によって、それぞれ建物が異なる強さを求められるようになったのは75年ほど前ですが、倒壊の原因として問題とされているのは1981年より前に建てられた木造住宅は屋根に関係なく強さが足りていなかったということです。
それが現在の家とどれくらい違うかという話なのですが。。。
木造建築に求められる強度は家の広さに対して、必要な耐力壁の量?が決められているんです。
耐力壁の強度とサイズをもとに計算するんですが、その基準が数十年前とはだいぶ違うのです。
上にも書きましたが、軽い屋根でも、重い屋根でも今の基準だと最低限でも40年前の約1、5倍、65年前の約2倍の強さが求められます。
この40年前以前の建物が淡路大震災で倒壊し、その頃の建物に瓦屋根が多かったことから、『瓦屋根の家は地震に弱い』という誤解が生まれたのです。
40年前以前の建物の耐震の対策として、屋根を軽いものに変える工事がされたのも誤解の原因でしょうか。
同じ構造の家なら、軽い屋根の方が負担が少ないのは事実ですからね。
耐力壁の強度がより正確に判断されているっていうのは、
同じ耐力壁でも数十年前は今より強い壁だと扱われていたということ。
例えば、昔からある、こういう↑筋交い(すじかい)の耐力壁ですが、数十年前は今より約1.5倍強い壁といて扱われていました。
片筋交い耐力壁は現在では2という強度とされているのですが、以前は3という強度があるとされていたんです
つまり、30という強度が必要な建物の場合、現在では2×15=30なのでこの耐力壁が15か所必要なのですが、以前は3×10=30なので10か所で良かったということです。
必要な耐力壁の数が全然違ってきますよね。
しかも、この筋交いを固定する金具や耐力壁の柱を固定する金具も、何度か行われた耐震のための法改正の度に、どんどん強いもので固定するように指定されるようになってきました。
数十年前は金具で固定しなさいっていう決まりもなかったんですよ
つまり、今よりずっと弱い耐力壁が、今より1.5倍も強い壁として扱われていたということです。
つまり以前は今より弱い耐力壁で、
しかも今より少ない耐力壁量で建てられていたということですね
あとは耐力壁をバランスよく配置することも求められるようになりました。
これは20年前より求められるようになりました。
阪神淡路大震災がきっかけです。
強い耐力壁がたくさんあっても、建物の片面に偏っていてはバランスが悪く、地震の揺れで倒壊しやすくなるのです。
詳しく説明すると難しくなるのですが、
建物の強さに偏りがあるので、弱いところにより強く揺れの影響が出るって感じでしょうか。
一部をとても強くしても、バランスがより悪くなって逆効果ってことにもなったりするんです。
古い家には日当たりの良い向きがほとんど全面掃き出し窓で、
壁が無いなんて家もありますからね。
バランスが心配です
耐震補強などの対策をした方が良いかもしれませんね。
今はそのような建物でも、掃き出し窓の周りで強度があるように作られます。
バランスが良いとは言えませんが、現在の最低限の基準は守られているはずです。
ちなみに現在の最低基準はこちら
※数百年に一度程度の地震(震度6強から7程度)に対しても倒壊や崩壊しない
※数十年に一度発生する地震(震度5程度)は住宅が損傷しない程度
数値的にしっかり決められていますが、震度で表現すると↑こんな感じです。
長くなりましたが、倒壊した建物が建てられた時代と現在では、そもそもの家の強度が全く違うということ、屋根の重さも考慮された強度が建物には求められているということで、
瓦屋根の家が弱いということにはならないのです。
瓦屋根の方が高い強度を求められるというのは確かですけどね。
もし同じ構造のまま、屋根だけ軽いものから瓦に変更するなんてことがあれば(無いと思いますが)ご注意ください
それは間違いなく、弱くなります
重い屋根の家は重い屋根用の強度、軽い屋根の家は軽い屋根用の強度で作られます。
あとはそれぞれの基準でどこまで強くするか、建てる方と設計士の判断ですね
今回はちょっと難しい話になってしまいましたが、読んでいただきありがとうございます。
建物の強度の話って難しくてよく分からないかと思いますが、少しでもご理解いただければと思います
瓦屋根だからって弱くない
1981年以前に建てられた建物は是非耐震診断を
話は変わりますが、保育園の頃避難訓練で救命滑り台を滑る練習をしました。
↑こういう、一般的には救助袋って言われるものなんですけどね。
布製で避難時に広げると滑り台状になって、高いところから避難できるものです。
うろ覚えだけど救助袋って不安定で怖かった気がする。。。
滑る練習しておかないと、子どもだと、いざという時なかなか滑れなかったかもな~。
普段、仕事で避難器具を設置することはあっても使ってみたことってほとんど無いです
いざという時のために、ちゃんと大人になっても避難訓練をしておきたいですね